2005年に書いたニュースレターの原稿を見直していたら
我ながら良く書けているものがありましたので
加筆して掲載させていただきます。
60代、70代の人の約65%が「年金だけでは生活費が足りない」と感じて
いるそうです。そんな時代背景もあってか、30代、40代の約73%が、老
後に向けての何らかの準備を行っているといいます。
資産形成の成功要素は「投資元本」、「利回り」、「投資期間」の3つですか
ら、早い時期に気づき行動に移すことは、「投資期間」を増やすことになり、
資産形成の効果を高めます。
しかしながら、日々、FPとして相談者と向き合っていると、まだまだ「お金
に目的をもたせる」ことができていない人が多いようです。そのため、なかな
か行動に移せなくなってしまうようです。
コンサルティングの際に、私が必ず確認することは、「いつまでに、いくらの
おカネが、何のために必要なのですか?」ということです。この答えよって、
資金の運用方法は大きく変わってくるからです。
また多くの人が、株式や投資信託を保有している人に聞いても
何年後にいくらにしたいのか、不明確なことが多いのは残念です。
それにしても「株に勝つ」って、どういうことなのでしょうか?
一年あたりの利回りがどれだけあれば良いのでしょうか?
「株に勝つ」ということの定義を行うには、株式市場の特性を知ってもらうこ
とが大切です。
日本証券経済研究所の「株式投資収益率」によれば東証一部上場銘柄平均
(1959年~1998年)のリターンは12%前後に収斂しています。
雑誌などにも、このグラフがよく使われています。
興味のある方は、木村剛著 講談社刊 「投資戦略の発想法」
に掲載されていますので、一読下さい。
つまり、日本の株式市場は40年間もの間、年利12%で成長していたという
ことです。年利12%といえば6年ごとに資産が倍増するペースです。手数料
や税金を考慮しなければ100万円が40年後に約9300万円になります。
これでは、ご不満ですか?
勿論、これから先も同じように成長するとは言えませんが、時間の経過ととも
に株式市場が拡大してきたことは、頭の片隅にとどめて下さい。
株式市場のリターンは短期間(1~2年)では、大きなばらつきが有ります。
しかし、投資期間が長期化し30年を超えるとある程度のリターンに収斂され
ていきます。これは「平均への回帰(Reversion to mean)」と呼ばれる現象で、
長期投資がリスクを軽減すると言われる所以です。
資産運用における目標基準のことを「ベンチマーク」といいます。複数の株式
等で運用される投資信託では、市場平均をベンチマークにし、それを上回るこ
とを目標にしています。どのような投資を行うにせよ、自分なりのベンチマー
クをもつことが大切ではないでしょうか?
こういった目標が無ければ勝ちも負けも無いからです。
また、あくまでも個人的な意見ですが、時間とおカネを掛けて個別銘柄を選択
しながら投資するのであれば、最低でも年10%以上の利回りは欲しいものです。
そうでなければ、「株式市場と連動するような投資信託を選んでいれば良かっ
た」ということになりかねないからです。
バートン・マルキール著「ウォール街のランダム・ウォーカー」(日本経済新
聞社刊)の中に、私の好きな挿絵があります。絵の中では投資家がスーパーマ
ンの格好をした証券マンらしき人物に説教をしています。
「値上がりする銘柄を当てたことはとても素晴らしい。しかし、
全体としてS&P指数に打ち勝つことはできたのかね?」
注)S&Pとはアメリカの株式指標のことです。日本でいう、日経平均株価の
ようなものとお考え下さい。
私自身は個別株取引を否定するものではありません。しかしFPとしては、ま
ず長期投資で、「株式市場の特性」を活かした資産形成を目指して欲しいと思
います。
■参考文献
木村剛著 講談社刊 「投資戦略の発想法」
バートン・マルキール著 日本経済新聞社刊
「ウォール街のランダム・ウォーカー」