五木寛之さんの「こころ相続」を読みました。
著者は私の亡父とも年齢が近く、父親と話をしているような気分になった一冊です。

私が「相続」の専門家だから手に取った本ですが、思っていた以上に読みごたえのある一冊でした。私たちが親や先祖から受け継いでいるものは想像以上に大きいものであることが実感できますし、もっと受け取るためにも生きてる今こそ語れというメッセージが伝わってきます。

【珠玉の一文】
「つまらない失敗談などを話してもしょうがないと思うような話のほうに、生き方の参考になる要素が詰まっていることもあります。」

五木さんのお父さんは敗戦後、

”寝るより楽はなかりけり。浮世の馬鹿が起きて働く”

と言って、お酒を飲んでいたそうです。
「敗戦は、父に野心と家庭と言う2つの崩壊をもたらしました。やがて朝から酒に溺れ、ほとんど無気力状態に陥りました。私は、そんな父の姿に、むしろ教師として私たちに範を示していた父よりも、親しみを覚えるようになりました。」と述べています。
なんとなく気持ちがわかる気がしました。

【刺さったコトバ】
・魚の食べ方も相続
・目に見えない財産を相続することも、相続のうちに入るのだ。
・「人の手本になることはできないが、見本くらいにはなれるだろう」
・桜は集団、梅は個人
・心の相続もまた面授でなければなりません。
・話したがらない話こそ資産
・泣く伝統は日本人に忘れられている大事な財産のひとつだと思うのです。
・苦しく辛い話はどうしても相続しづらいきらいがあります。
・歴史の表と裏
・私は両親からいろんな話を聞く前に別れました。今にして思えば痛恨の極みです。